2009/11/14

選択という行為(2) - 自然言語 サンシャイン牧場 価値を組み立てる専門職の出現

前回の続き
前回は選択と組み合わせの重要性について、DJやコラージュをモチーフにお話しました。今回は価値を組み合わせることを専門にしている人がとても増えたんだという話をします。

  • 自然言語 - 価値を積み立てる
第二言語を勉強していると時々母国語に存在しない表現にぶつかります。例えば、”お疲れ様でした。”にあたる表現は英語にはないです。挨拶として誰かが一仕事終えたときにねぎらう習慣がないからです。一致しない表現を伝えたいときは代わりにたくさんの情報を相手に与えることで意味を理解してもらうしかないです。価値が共通認識でない場合、労力がかかります。


このように、どの概念が言語化されているかというのはその国の文化によるところが大きいと思われます。つまり、どの概念が頻繁に会話に登場し、言語化の必要性に迫られたのかというところが大きいのではないかと思います。頻度によって価値は積み立てられます。

結局、人が言葉という物を使い始めてから概念の構築と細分化をずっと繰り返しているんだと思います。過去の資産を実体化するとそれを元に別の概念を構築するという次のステップに進めますね。

  • 人工言語 - 選択肢の爆発と急激な価値の構築
新しい概念が目まぐるしく登場するIT業界では常に概念の構築の繰り返しの必要性に迫られているといえます。
                      Java           Extensible Markup Language
                       |      Script  \              /        /
                       |          |          \    /        /
Asynchronous JavaScript            XML
             \          |             /
                 \      |      /
                       AJAX

マッシュアップエンジニアはコラージュアーティスト。
- Idea Generator
前の職場でお世話になった方のアプリです。個人的にすごく気に入っています。この例ではアイディアのひらめきを偶然にゆだねています。
- Yahoo Pipes
WebAPIをオブジェクトとして組み合わせることでプログラミングできるビジュアル統合開発環境。

  • 東洋経済 - 価値を組み合わせる人たち
昔、東洋経済の記事で労働市場のグローバリゼイションについて読んだことがあります。この中で、労働力の移動によって国の垣根は薄れ、国を超えて個人が価値提供者と価値消費者に二分されつつあるとありました。また、今後個人ごとに価値を提供する側と消費する側によって就く職種が変わってくるのではないかということでした。価値を提供するものというのはここでは価値を価値として発見し、それを市場に持ち込む者という意味です。アウトソーシングできない全ての職種がこれにあたります(経営、マーケティングなどの意思決定)。そうでない分野の職種は今後、いっそう受動的に国際労働力との競争にさらされるようになっていくであろうという話でした。

すでに日本は部分的に生産国から舵取り国へ移行しています。ここで重要なのは、価値を生産(創造ではない)する人たちよりも価値を組み合わせ提供する人たちが重要視されているということです。価値を組み合わせることを専門にしている人たちがいて、その行為自体が価値として認められる状況がすでに出来上がっているということです。

  • サンシャイン牧場
よい例ではないですが、身近なところでお話します。例えば、サンシャイン牧場では以下の価値が提供されています。

・息の合った仲間と安心して遊べる空間が提供されている。冒険はちょっと
・目的が提供されている
・目的が提供されているから過程が楽しめる
・以上、知らない人と目的を共有しない状態から始めないといけない空間を与えていた2ndlifeと異なる
(サンシャイン牧場使える環境にないので合ってるか不安です)

そしてこの開発元は北京に本社のあるRekoo社です。多国籍企業が日本に価値の消費者 - 時間やお金を費やす人 - がいることを知っていて、自分達の価値を提供できる条件がそろっていたことを示しています。

  • lang8 - 価値同士の引力
これは外国語を勉強したい人がblogを書いて、それを母国語の人が修正するというサイトです。自分の外国語を直して欲しいという欲求と、他人の外国語を母国語で直してあげるという代償が二箇所に存在することに気づきそれらをうまく繋ぎ合わせたものです。世界規模でそれを実践したというところもすばらしいところ。まったく関係ないところに存在する複数の欲求をうまくつなぎこむということによって強いエネルギーを発生させるということを発見した好例です。

  • まとめ
私は、今IT技術者に起きているような個人に対する雑多な大量の情報流入(RSSとかSBMとかtwitterとか)がビジネスパーソンや消費者に一般的に及ぶ時が来るのではないかと思っています。そして人には選択肢が大量にあると選択を放棄するという性質があります。そのため、DJやVJ、空間コーディネーター、ファッションコーディネーターのように他人の資産を利用し推薦し分配する人 - Tipping PointのMavensみたいな人達?、過去の資産を利用する人 - 自身では何かをクリエイションするわけではないけれども、選択や組み合わせということに自身のクリエイティビティや自尊心を置いていて、そのセンスに凄く磨きをかけていてる人 - が今後一つ重宝されるのではないかなと思っています。

上に挙げたものの基幹になるセンスは各分野ですでに語りつくされ実践されているのではないでしょうか。それでもなぜか、これは私にとって今一番研ぎ済ませたいセンスの一つです。
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