2009/10/22

これから何かをしようと思っている人たちへ

自分が世界のどこに所属しているか考えてみようという話についてお話しします。どの世界を目指す人も、自分が所属する業界のマップやどういう潮流の中に身を置いているのかなるべく把握しているべきだよねという話です。IT業界をネタにして話をしますが、なるべく他業界の人にも分かるように書くつもりですので良かったらお付き合い下さい。

最近、エンジニアの間で英語圏に出るべきかどうかという議論が行われているんだけれど、実際のところ出てみてそれが何なのか考察している記事をあまり見かけませんでした。それから世界のどこにいても最良な事は結局自分が何をやれるかに尽きるのと思います。日本にいた方がわざわざ言語のリスクを背負わなくて良いので、政治力を発揮しやすいし本来的な目的に集中できるはずです。ではなぜ海外に出たいと思う人が潜在的にいるのか。IT業界の悲惨な労働環境のネガティブリーズンからはちょっと切り離して考えてみますと、海外志向の人は日本に無くて海外にあるものを求めてるのではないかと思います。それから勘の良い人たちはこれからお話しすることを嗅覚であたりまえにとらえている方もいるのではないかと思います。もうすこし自分たちをとりまく環境がどうなっているのか、自分が業界全体のどのニッチマーケットに対して従事するべきか少し頭の中を整理するために考察をしてみます。


最初にIT業界のマップを示します。どの分野にどれくらいのプレイヤーがいるのかということを示しています。自分のスキルや方向性と照らし合わせてどのような道筋が明るいのか、脳裏の画像をもう少し鮮明にしてみようと思います。
発起IT業界と一口に言っても、様々な業種に従事している人たちがいます。それは以下の用な階層構造になっているのではないかという簡単なメモが今回の考察の発起になりました。

↓ ・web、パッケージソフトウェア    
↓ ・先端、特殊技術     
↓ ・OS          
↓ ・ハードウェア、ネットワーク 

各階層ごとに概ね専門性の異なる技術者がいると思ってください。ある階層の技術は直上の階層の技術に依存しています。この例でいくとOSはハードウェアの技術に依存しています。またある階層でイノベーションが起こるとそれ以上の階層にイノベーションが波及することがしばしば起こります。私が所属するweb業界は最上部に位置するので、技術的なイノベーションからは割りかし鈍感な位置にあると思います。

それに対して、各階層に従事する人の数は専門性が求められるweb以下の分野の方が少ないのではないかというのがメモの趣旨です。なぜwebの技術者たちはプレイヤーの多い分野で競争をしいられるのでしょうか。

web業界は文化的にも他と階層の技術者と独立している感じがしています。技術に対する愛が強く、アカデミズムに近く、業界外の人から見るといわゆるオタク的な人たちはより下の階層に多いのに対して、webに所属している人たちは普通の人の感性を兼ね備えた人たちが多い傾向があるように思います。

業種別のマップ日本の優秀なエンジニアが個人的に際立って有名になることはあるのに、オープンソースコミュニティに従事してる日本人の絶対数や国際的に成功した国産ソフトウェアの事例がなぜ少ないのか常々疑問に思っていました。’言語の壁’というのは多分に大きな障害であるとは思いますが、日本の製造業や娯楽産業などの輸出産業と比べると不自然に思えます。オープンソースコミュニティに関しては個人がコミュニケーション能力を要求されるからでしょうか?技術者が忙しすぎるからでしょうか?それでは本業のwebはどうでしょうか。日本のチームが作ったサービスで外国人が口を揃えてもちろん知ってるよ使ってるよといったものはなかなか無いと思います。

欧米のサービスと日本のサービスは今のところ一長一短ではないかなという印象を持っています。欧米のwebサービスを立案から目的までの到達点までが直線的で、骨太だがきめが粗いのでダフトパンク型というふうに思っています。それに対して、日本のサービスはUIが異様に発達していたり、完成度が高い製品が多いのでフランソワケヴォーキャン型ということにしてみています。イノベーションそのものを起こせるかどうかについては西が東がということは関係なくて、そのチーム次第ではないかと思っています。また、国際的に有名なwebサービスと比べても日本のサービスは世界に通じる十分なクリエイティビティを持っていると思います。アメリカと日本を例にあげてIT業界そのもののアイデンティティを探ってみたいと思います。

まずはアメリカ合衆国のリサーチから。Occupational Outlook Handbook (OOH), 2008-09 Editionではコンピュータプログラマがどの産業で働いているかについて示しています。
National Employment Matrix, employment by industry, occupation, and percent distribution, 2006 and projected 2016. 
この資料はアメリカ合衆国全体のコンピュータプログラマの分野別就労者数を示しています。各項目は左から2006年の[就労者数, 産業別パーセンテイジ, 労働者数パーセンテイジ]、2016年の見積り、労働者数の伸び率、労働者数推移となっています。

単位%
01.72: コンピュータと電子製品生産業[Computer and electronic product manufacturing] + 電気装置・製品と部品生産業[Electrical equipment, appliance, and component manufacturing] 00.84: 遠隔コミュニケーション[Telecommunications] 03.93: インターネットとその他情報サービス[Internet and other information services] 38.11: 専門的、科学的、技術的サービス[Professional, scientific, and technical services]、うちコンピュータシステムデザインと関連サービス[Computer systems design and related services]が30.52% web業界が含まれていると思われるインターネットとその他の情報サービスは意外と少なく4%の人が就業していました。表中で黄色くハイライトされている大項目のうち最も多かったのが専門的、科学的、技術的サービスで38%でした。より専門性を要求される分野に多くの人が投入されていることが分かります。

それでは日本の場合はどうでしょうか。残念ながら粒度の高い情報にぶつかりませんでした。

ITPro一万人調査
表Aでは業種別の就業者の割合を示しています。ユーザー系というのは本来サービスを受ける側である企業がIT部門を抱えている場合を指すようです。独立系ソフトウェアベンダーの割合はメーカー系ベンダーを僅差で超えて17.7%。意外と多く感じます。SIベンダーとソフトウェアベンダーを足すと、メーカー系に対して独立系に従事する人が1割多いことになります。ただしプログラマ以外の職種を含んでいるため正確でないことに注意してください。

産業構造審議会 高度IT人材の育成をめざして
クリエータとは新たな要素技術の創造等により社会・経済にイノベーションをもたらす人のことを指すそうです。職種が具体的に示されていませんが、3.5%という割合はイノベーションによる差別化をするための要員を抱えてない企業が多数派であるということを示しています。

こうして考えると、シリコンバレーの製造業を中心として発達してきたアメリカの状況に対して、日本は90年代後期に独立系として参入した企業がまだ多く残っているという感じではないでしょうか。もう一度メモを思い出してください。メモの予想は日本に対しては概ね合っていると言えそうです。しかし、アメリカに関してはまったく違いました。アメリカの場合すべての階層の縮小図がひとしきりサウスベイエリアに集約されていることが強みであり、他の地域にイノベーションを波及させているといえるのではないでしょうか。そしてそれにはヨーロッパを含めた海外も含まれているのではないでしょうか。環境を整え国外から優秀な人材を呼び込むようなアミューズメントパークのような都市開発能力、それが伝統的なアメリカ西海岸の能力ではないかとサンフランシスコに行ったときに思いました。

webではなくある技術に特化してよりニッチマーケットに入り込むのも一つの選択肢です。ただしR&Dで行われているようにそれなりの資金と同分野の技術者を集めなければならない覚悟はしておいたほうが良いのではないかと思います。

このようにまずなんとなく日々思いついたことをベースにランダムにアイディアを創出するのではなく、世界規模のマップをしくという目的と現状の把握のアスペクトを導入してみませんかというのが趣旨です。デザイナ、ヘアドレッサーなら世界の潮流を追いたいのか、日本に輸入したいのか、日本のトレンドを押さえたいのか、日本で学ぶこととの違いは何かといった話です。さらにはもっと局所的にブレイクダウンしたセンスをとらえることを目的としています。

では次回に続きます。

次回はチームで行動するときにどういう成果が期待できるかということについていくつか例を挙げて考察します。
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